自分を大切にしよう、といわれることがある。でも本当に長年、自分を大切にするということがどういうことなのかわからなかった。重要性もわかっていなかったと思う。大切にしたところで、何が変わるのかという気持ちもあった。
でもその頃はだいたい無理をしていた。膝をすりむいたまま走るみたいに。
そして今、すこしわかってきたことがある。それは「自分」がわからないと、自分を大切にすることも不可能ということだ。暑がりの人に毛布をかけても嫌がられる。ムスリムの人に豚肉料理を作っても尊重されていないのではないかと思われるかもしれない。大切にするって、その人のことがわからないとわからないのだ。
「自分を大切にする」ことの意味
自分 を 大切にする
たった3語。これが難しいと感じる理由は、「自分」にあると思う。自分のことって、わかっているようでわかっていないもの。あるいはわかろうとしなければわからない。見方によっては、「自分なんて存在しない」と言ってしまうこともできる。
そんな中知っておきたいのは、自分が何が嫌で、何が好きなのか。そしてそれを現実に投げかけていく経験を積むことだ。これは、自分と現実との乖離をなくしていく訓練。「こんな現実は望んだものじゃなかった」という状況にならないための訓練。
自分のことがわかると、何が起こるか
では、自分のことがわかると何が変わるのだろうか。
自分の意見や感じ方を正当なものと感じられる
ひとつめは、自分の思いや意見、感じ方を正当なものと思え、必要に応じて主張できることだ。これはいわゆる「自分に自信がもてた」という状態と同じように見えるが、実際に自分に自信があるかどうかはあまり関係がないように思う。
大事なのは、自分の気持ちや主張が他の人のそれと違う、もしくは対抗するものであった場合も、それは仕方がないと思えることだ。自分の状況や気持ちを他人が知ってくれている、察してくれるということはほとんどの場合ない、もしくはずれていることが多い。でもそれは仕方のないことだ。だって別の人間なのだから。
そんな他人が投げかける言葉や要求を、そのまま100%のみこんでしまう必要は本来ない。でも、自分のことを知らないと、ぼんやりと感じるモヤモヤや嫌な感じも「気のせいかなあ」と感じて、受け入れてしまうかもしれない。そんなことが積み重なると、心身に疲れや悲しみみたいなものが積もってきて、ポキリと折れてしまうおそれもある。
これはいわゆる自分軸・他人軸という考え方にも結びつく。私は自由に生きたいと思う一方で、他人の機嫌や見方がどうも気になってしまい「苦しい…ぶれる…自分軸で生きれたら…」と思っていたのだけど、もしかしたらそれはマインドや姿勢という以前に自分の「軸」を知らなかったこと、知ろうとしなかったことが大きかったのかもしれない。
失敗パターンを繰り返しにくくなる
ふたつめは、自分の失敗パターンを知って、それを回避しやすくなること。自分がどういうことに落ち込んだり、うまくいかなくなったりしたのかをメモしておく。解決法は書いても書かなくてもいい。ただ、そういうことがあったと覚えておくことは(そのときの感情の度合いや自分でコントロールできる範囲の大きさにもよるが)必要だと思う。
身近なところだと日々の買い物。買ったはいいが使わなくなったり、処分したりしたものがないだろうか。それをどういう状況や目的のもと買ったのか書いておくと、同じ買い方をしそうになったとき踏みとどまれるのではないだろうか。
また失敗パターンと同様、成功体験もメモしておく。そうすることで一貫する特徴が見えてきて、これが自分のスタイルといえるものができてくるかもしれない。
自分の弱みと強みを自覚できる
みっつめは、自分の弱みと強み、好きなことや嫌なことを自覚でき、時間とパワーの配分、自分の配置をコントロールできるようになることだ。
「好きなことくらいわかっているよ」という人は多いだろう。でももし、好きなことをする過程がどうも苦手、疲れてしまうというのであれば、同じことをするにしても別の方法を考えたほうがいいかもしれない。
頑張らなくてもできることのほかに、頑張ればできることがいろいろあると思う。でも、「頑張る」ということは基本的には負荷がかかっている状態だ。
試験勉強など決まった期間で「頑張る」のであればいいかもしれないが、それを長く続けようとすると続かなくなる可能性が高い。なぜなら人には調子がいいときもあれば、悪いときもあるから。頑張らないとできないこと、消耗してしまうことであれば、得意な人に任せる、人が作ったシステムに任せるなど、何かに頼ったほうがいいのではないかと思う。
自分を知ることは、大切にすることの第一歩
自分を大切にする上で大事なのは、自分のかたちを知り、それを受け取ること。無理をさせたり、ねじ曲げたり、ほかの何かになろうとしないこと。スーパーマンになろうとしなくていい。空を飛ばなくていい。
これを書いていて、なんだか「群盲象を評す」みたいだなと思った。インドの昔話で、目の見えない人たちが象を触り、ああだこうだと言い合う話。部分は見えても全体をとらえるのは難しい。
でも、他の人やものや選択肢が多くある世界で壊れてしまわないためには、自分の形を取り違えずにつかみとる必要がある。それが、自分を大切にすることにつながると思う。

